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ハマム(トルコ風呂)を目指してトルコを訪れる旅行者も多いようです。ところで、ハマムとこの資料の主力商品温泉とはどこが違うのでしょう?実は、重複する部分もありますが基本的には別のものと考えてください。以下の用語集でトルコのお風呂がどのような概念なのかを把握するところからどうぞ。
いずれも語源は竹内和夫「トルコ語辞典ポケット版」大学書林を参考にした。
ハマムの建物は3つの部分から構成されている。まずは入り口を入ったところ。
カビネ(更衣室)が周りを囲んでいるスペースで、客待ちの三助が休んでいたり、飲み物をカビネに届ける従業員が行き来している。多くの場合、2階部分(大きなハマムでは3階まで)にもカビネが配置されている。
ドアをひとつ入ると、湯上がりに腰巻きを取り替えるスペース。寒くもなく、暑くもなく、このスペースによって浴室の熱が逃げないようになっている。のぼせてしまったら、このスペースでしばらく休むとよい。
一番奥が浴室の区画。この区画の真ん中には大きな丸い大理石の石盤があり、やけどをしない程度の温度に暖められている。この上に横になって体を温める仕掛け。浴室にはドアのない小さな部屋がまわりを取り囲むようにして配置されている。これらの部屋にはお湯と水の出るカランが取り付けられていて、「洗い場」として使う。
入り口を入ったところには「番台」があり、料金はここで払う(前金)。料金表が貼り付けられているので、ケセ(kese:垢スリ)、マッサージ(masaj)など、希望のサービスを選択。
大きなハマムではケセやマッサージを頼むと木札やコイン状の「利用券」を渡されるかもしれない。利用券はサービスを受けるとき浴室にいる三助に渡す。なお、ケセやマッサージの必要がない場合は「サーデ・ハマム」と言って頼む。
番台の後ろには小さなロッカーがならんでいて、貴重品はここに預ける(emanet:エマネット)。渡されるロッカーの鍵にはたいていゴムひもが付けられているので、腕や足首に巻いておく。
受付を済ませるとハマム用の腰巻きを渡され(温泉とは違いハマムでは出された腰巻きを使うことが普通)、カビネに案内される。荷物もここへ。カビネはひとり一部屋ずつ使えることが普通だが、相部屋になったり、大部屋の休憩室になる場合もある。
カビネの鍵はしっかりかけただろうか?着替えが済んだら備え付けられているハマム用のサンダルに履き替えて、いざハマム。ハマム用のサンダルは木製で、慣れないと非常に歩きにくい。特に2階のカビネに案内された場合など、転んで痛い目にあわないように(経験者は語る)。風呂に入る前には浴室の入り口のあたりで休んでいる三助から石鹸をもらっておくとよい(タダ)。シャンプーは番台で手に入るが、こちらは有料。
風呂場の中での「作法」はだいたい「温泉の作法」で書いていることと同じ。
まずは洗い場へ。ひとつの区画に3つずつくらいカランが並んでいる。タオル、シャンプーなどが置いてあるところは他人が使っているところなので「横取り」しないように(このあたり結構うるさい)。洗い場では絶対に立って湯を使ってはならない。万が一トルコ人客に「しぶき」がかかった場合、血相を変えて怒ること必至。
湯をザバリと浴びたら石盤の上でのんびりする。腰巻きの取り扱いにはくれぐれも注意し、中身を見せてしまう粗相のないよう注意(見せた方が無礼)。
毛穴が十分に開いて、そろそろハマムにも満足ということになれば、三助を呼ぶ。毛むくじゃらのトルコ人だが三助だけは胸毛を剃っていることが多いので、すぐに見分けがつくと思う。三助の仕事ぶりだが、当たりはずれは大きいことを覚悟しておいた方がよい。「はずれ」を引いた場合、相当に手荒い(?)仕打ちを受けることになる。
まずはマッサージ。タイ・マッサージや東アジアのものとは違い、ツボを刺激するタイプのマッサージではなく、筋肉をほぐす感じ。気持ちいいかどうかは三助のウデ次第。ケセの方はどうやって丁寧にやらせるかがカギ。こちらは三助の腕前よりも時間をかけてしっかり仕事をしてくれるかどうかが問題。トルコ語がある程度できれば、なにかにつけて注文を付けられるのだが、そうでない場合「運を天に任す」ことになる。
ケセと同時にシャンプーもしてくれるが、黙っていると体を洗うのと同じ石鹸でやられてしまいかねない。この頼みもしないのにしてくれる石鹸シャンプー、さすがに評判が悪いことを察しているようで、シャンプーを渡しておけばそちらを使ってくれる(使いすぎるきらいはあるが)。
ハマムをあがるときには新しい腰巻きに取り替える。ケセやマッサージを頼んだ場合なら三助が持ってきてくれるが、そうでない場合、浴室を出てカビネのならぶスペースに出たところにいる三助に頼めば替えを用意してくれるはずだ。古い腰巻きの「始末」だが、浴室の出口近くにぐちゃぐちゃの腰巻きが積まれているところがあると思うので、そこにポイしちゃって結構。
腰巻きを新しいものに取り替え浴室を出ると、まずはソファに座らされ大きなバスタオルをかけられる。このとき、のぼせ気味の体には非常にありがたい簡単なマッサージ(理容店でしてくれる感じ)と体を拭いてくれるサービスがあるのがGood(もちろんタダ)。
体を拭いてもらったら、着替えに使って荷物を置いてあるカビネへ。ソファ(というより長椅子)でごろごろして過ごす。ハマムあがりの昼寝は気持ちいいのだ。
ケセやマッサージを頼んだ場合には三助にいくらかのチップを払う習慣。金額はたばこ1箱程が妥当と思われる。国産たばこ(100円)にするか、洋モク(200円)にするかはサービス次第で決める。サービスが雑だった場合には「払わない」という手も堂々と(?)行使してよいと思う。
チップをわたすタイミングは帰りぎわ。三助はみんな似たように見えるので、担当が誰だったのかはよく覚えておく必要がある。
なにしろ入ったことがないので情報はすべて伝聞である(当たり前だが)。結論から言うと、男性用に比べて満足度が低いという意見が多い。
観光地をのぞけば腰巻き(巻くのはそれだけではないが)は頼まないと出てこないので、水着を用意した方がよい。「風呂あがりのサービス」はなく、バスタオルなども持参した方が無難。また、「三助」のサービスも男性用に比べるとだいぶん省略されているらしい。
なお、女性の客を男性の三助がサービスするということは絶対にない。しばしばこのようなハマムの話を聞くが、それらは観光地の、外国人客専用のハマムである。トルコ人の女性が行くことは、絶対にありえない(これはめずらしく断言)。
こうしたハマムで「本物」のサービスを受けることはまず無理であろう。そしてなにより、このようなハマムを利用することはトルコの社会規範に反する行動であることを知っておいてほしい。
よいハマムの分布は東高西低の傾向。1回しか入ったことのないハマムは除外したが、東の内陸部、なかでもエルズルムや三助の名産地(?)トカットを中心とするあたりに魅力的なハマムが点在している。
手放しに絶賛。三助の当たりはずれがない。バザール近くのロータリー、ギュルジュ・カブの南側。ケセ、マッサージ、靴磨きなど込みで約4ドルくらい。ここは男性用だがエルズルムはハマムが多い。女性用も期待できそうなので探してみてください。
旧市街チャルシュでバスを降りると目の前にそびえる。男性用の区画と女性用の区画が全く同じ大きさで、ひとつの建物の中に設けられている点がこのハマムの特徴。男性用は三助常駐だが、女性用の方は頼むと近所からおばさんがやってくる。三助のレベル高。
貴重品は着替え用の個室に置いてもまず心配ないし、ハマム受付のエマネットに預かってもらうこともできる。
ウルジャミの東。「おみやげ調達作戦」の途中で立ち寄ることにしている。サービス、雰囲気とも及第点。
中心街から橋を渡り、西へ。砦のふもと。男性用のハマムを通り過ぎたところに女性用もある。建物は小さいが悪くはない、。
手軽なので一応。トラムウェイでスルタンアフメットの隣の停留所がチェンベルリタシュ。スルタンアフメットから歩いても5、6分。特にお勧めというわけではないが、外人客の扱いになれている分快適だという人もいる。女性用にも腰巻きやタオルのサービスがある。
ハマムには浴槽こそありませんが、お湯はジャバジャバ出ます。トルコ人というもの、「お湯を使うことなしには生きられない」人たちらしく、水事情の悪い都市ほどすばらしいハマムを生む傾向があるようです。
「水道の出が悪いトルコの街」に迷い込んだら、ハマムを探してみるといいことがあるかもしれません。