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トルコ風ピザピデ(pide)。その専門店がピデジ(pideci)である。ピデジは安く、そしてうまい。
ピデの特徴は生地が肉厚でどちらかというとパンに近い感じなこと、そしてびよよーんと長い形。口で説明するとまったくたいしたことなさそうなのだが(トルコの人にとっても決して「ご馳走」ではない)、これがうまい。
うまさの秘訣はやはり、ちゃんとした釜で焼いていること、そしてトルコ共通の材料の良さに尽きると思う。注文を受けてからトッピング、釜に入れてチャイでも飲みながら待つこと約10分。
トッピング(というのとはだいぶんイメージが違うのだが)でポピュラーなのはクイマル(kıymalı:kiymali:挽肉)、ペイニール(peynir:チーズ)、ウスパナック(ıspanak:ispanak:ほうれん草)。それぞれにユムルタル(yumurtalı:yumurtali)を付けて注文すれば、卵を上に載せて焼き上げてくれる(非常にうまい)。
ピデジにおける定番メニューのひとつにラーマジュン(lahmacun)というのもある。ピデよりも薄い生地に挽肉やタマネギを載せて同じくオーブンで焼いた料理。「ピデでは量が多いな」というときにはこちらにするとよい。
店によっては釜があるということを活かしてピデやラーマジュン以外の料理も用意している。よくあるのはオーブン焼きのキョフテ(köfte:kofte)や、さいころ角に刻んだ肉や野菜をオーブンで焼いたクシュバシュル(kuşbaşılı:kusbasili)。
ピデジには「当たりはずれ」が少なく、そしてなにより安い。ピデは1ポルシヨン(1人前)で200円程度。ラーマジュンで済ませればさらに安く、飲み物を頼んでも200円以内で収まることは珍しくない。食事の店選びに迷ったら、とりあえずピデ屋という選択は無難である。
しかし、ピデジ最大の問題はアルコール類を置いていないことだ。たとえ観光地であってもピデジは頑ななまでにアルコール類を置かない。ピデ、ラーマジュンのいずれも、ワインやビールとの組み合わせが極めて優れている。にもかかわらずピデジにはアルコール類がないせいで、われわれはときに切ない食事を余儀なくされる。
ピデジは店で飲食することも可能だが、ほとんどの店で持ち帰りや出前のサービス、パケット(paket)をやっている。店によってはその場で食べる客の方がかえって少ないぐらいだ。そしてパケットは、前述したピデジ最大の問題に対する抜本的な解決策となりうる。
留意点は外国人がパケットを利用するとは思っていない可能性が高いこと。アルコール類のないピデジのテーブルで寂しい食事をする羽目に陥らぬよう、手順を整理しておこう。
まず、高額紙幣しか持ち合わせがない場合、早めに適当な買い物をして、くずしておくこと。なにしろピデジは安いので、高額紙幣に対する釣りを用意できないことも考えられるからだ。ピデが焼き上がったにもかかわらず釣り銭の用意がない場合、ピデジの主人は近所の店まで釣り銭をかき集めに走る。当然ピデがさめてしまう。
続いてうまそうなピデジを見付ける。混んでいる店がよいのは確かだが、店では食べないパケットの客が多いことも少なくない。客の入りだけでは判断しがたい場合もある。まだあせってピデジに入ってはいけない。
次は酒屋(というか酒を置いてる雑貨屋)を探す。エフェス・ピルセンなどビール会社の看板が目印。ビールの場合はまだ買わずにピデ屋へ(ぬるくなることを避ける)。ワインでいく場合にはこの時点で仕込む。ワインを買った場合、プラスチックのカップも「おねだり」しておくと(タダ)、あとあと役に立つ。
いよいよピデジに入店。注文である。店で食わされる羽目になるとせっかくのお酒を楽しめなくなる可能性が大きい。店の人にはできるだけ素っ気ない態度で接すること。そしてピデが焼き上がったら、迅速に受け取り、速やかに店を去る。ビールと一緒にやりたい場合、先に見付けておいた酒屋へ。とにかく急いで宿に帰ろう。