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前半の「宿泊施設の種類」は「トルコにはどんな宿があるのか?」という一般的なサマリーになっています。この分類では当てはまらないものも少なからずありますが、大雑把なイメージはつかんでいただけると思います。後半の「宿泊施設利用のTips」では、宿泊施設を利用した経験の中から、知っておいても損はなさそうなトピックを選んでみました。
観光省の格付けを受けているホテル。エレベーター、シャワー、トイレ付きの客室などを最低条件に、内容により星の数が増やされる。同じ星の数でも、イスタンブルやアンカラなどの大都市とその他の地域では料金が大きく違う。目安として掲げている料金は地方都市での平均的なツインの料金と考えてほしい。
最低限の設備はそろっているが過大評価は禁物。「大当たり」もある一方、「ムリヤリ星をもらった」雰囲気のところも少なくない(政治的なにおいを感じる)。
危険な宿はないと思うが、客室を確認してから利用しよう。料金は2000円前後から。
1つ星のホテルにバーやレストランの設備も加わるのが普通。客室にはほぼ確実にテレビや外線電話があり、内装や調度品も1つ星に比べ格段によくなる。中流以上のトルコ人が旅行や出張で泊まるのがこのクラス。特に豪華な宿を求めるのでなければ十分快適。料金は3000~5000円ぐらい。
トルコ資本の高級ホテルの多くがこのクラスに入る。内容は日本のホテルと比べても見劣りしない。宿泊料の定価(ラックレート)は3つ星に比べると大幅に高く、最低6000円前後、1万円を超える宿も珍しくない。インターネットや日本の旅行代理店で宿泊プランを探した方が安い場合も多い。現地の旅行代理店で掘り出し物の宿泊プランが見つかることもある。店頭のポスター(トルコ語だけだが見当はつくだろう)や英字紙(Turkish Dairy News)の広告をチェック。
主に外資系。料金は日本と変わらないか、むしろ高い(日本の高級ホテルは安い)。4つ星と同様、事前に手配してしまった方が安く上がるようだ。
古い邸宅を改装したホテル。イスタンブルの旧市街やサフランボルに多いが、観光ブームとともに全国的に増えつつあるようだ。こうしたホテルは設備の基準(エアコンやエレベーター)を満たせず、特別カテゴリーとして扱われている。料金は2つ星から3つ星相当、イスタンブルではもう少し高めで、4つ星と同等程度になろう。どこも魅力的な宿なので、ぜひとも宿泊してみることを勧める。
いわゆる安宿で「商人宿」のイメージ。設備は簡素で、トイレ、洗面は共同、通常エレベーターもない。地方の街や村では、こうした宿しか選択肢がない場合もある。
宿泊客は男性に限られ、トルコ人の女性や家族連れはまず宿泊しない。外国人女性が宿泊を断られることは滅多にないが、従業員や宿泊客から性的な嫌がらせを受けるリスクは大きい。安いという理由だけで女性観光客が泊まることは勧めない。
イスタンブル(アクサライ、ラーレリ周辺)やイズミル(バスマネ駅周辺)などの大都市では、こうした宿がいわゆる「置屋」の役割をしている場合がある。なかには麻薬取引が行われている宿もあるので、男性でも宿の選択には注意が必要だ。
比較的低料金で、もっぱら女性客や家族連れを対象とした宿。アイレ・オテルaile otel、あるいはアイレ・イェリaile yeriと呼ばれている。一般の宿との見分けはつきにくいので、お節介そうな(?)トルコ人のおばさんにでも近所の「aile otel」を尋ねてみよう(悪いようにはされないだろう)。「男性お断り」の宿もあるが、胡散臭そうな格好をしていない限り宿泊できる場合が多い。
直訳的には「家族」という意味の単語「aile」には独特の意味がある。家族連れや女性客のための席、アイレ・イェリaile yeriを用意している飲食店も多い(席の善し悪しは店による)。女性だけで旅行するなら、覚えておきたいキーワードだ。
ペンション。大きく分けて2種類。料金が比較的安いことは、両者に共通している。
キッチンや冷蔵庫を備えている貸別荘のような宿。ほとんどの場合、寝室のほかにリビングも用意されており、そのリビングにはソファー・ベッドが置かれている。トルコ人の家族連れが長期滞在する行楽地のほか、大都市にもこのタイプの宿がある。「アパルト・オテル」を名乗っていなくても温泉地の宿泊施設には同様の部屋が多い。
料金は地域によって大幅に違う。イスタンブルで立地の良い宿は1万円以上、地方の行楽地や温泉地では2000円前後から。基本的に長期滞在用だが、空きがあれば1泊でも宿泊可能。連泊の場合(3泊程度から)は割引してくれる宿も多い。
筆者の造語であり、トルコで「ムスリム・ホテル」という表現は通じない(もちろん日本でも)。ひとことでいえば、経営者が「親イスラム」であるもの。イスラム原理主義が影響力を持ち始めた1990年代以降に成長してきたと考えられる。
観光省の格付けを得るためには、アルコール類の提供が避けられない。この条件を受け入れたくない経営者と、飲酒する客との同席を好まない客のニーズから成長してきたようだ。3つ星相当のレベルに達している宿も少なくないが、バーを設置して観光省の格付けをもらおうとは思っていないので「星」はない。
特徴はレセプション付近に掲げられたコーランの文句を刻んだ額やメッカの写真、客室のクローゼットに備え付けられた礼拝用のじゅうたんや数珠など。
イスラムに対して距離を置く世俗派のトルコ人のなかには、こうしたホテルを敬遠する傾向がみられるようだ。同時に、ホテル側でも世俗派のトルコ人を忌避することがある。その一方、宿泊客に対しては特に干渉しない姿勢で、サービスに徹する宿も珍しくはない。外国人宿泊客に対しては施設内での飲酒も含め概して寛容で、うるさいことを言われる心配はない。条件さえ折り合えば悪くはない選択肢だ。
予約の習慣はあまりなく、当日直接宿に行く場合が大多数。何日も前から予約をするのは、行楽地のホテルで宿泊プランを利用するときぐらい。部屋を確保するための予約というよりも、安い宿泊プランを求めるための予約だ。
一方、比較的評判の良い宿を中心に、宿泊当日の到着前に電話を入れて部屋を確保してもらうケースはかなりある。このような場合、昼ごろまでに電話をしておけばほぼ確実だろう。本書で紹介している宿泊施設にも予約を勧めているところがあるが、特に断りのない限り、ここで説明したように当日連絡しておけば十分。
レセプションに料金を表示することが義務づけられている。しかし、料金表の宿泊料はあくまでも「定価」であり、実勢価格よりも格段に高いことが観光地のホテルを中心に目立つ。初めて泊まる宿では、値引き交渉をしてみよう。交渉は英語でも構わない。しばし考え込む表情をしてみるのも効果的。「インディリムindirim(値引き)」とつぶやいてみてもよいかもしれない。
だが、プライドを重んじるトルコ人だけに、過激な値引き要求は感情を害し逆効果を招くこともある。観光客相手の商売をのぞけばトルコでも定価の商品・サービスが多い。ホテルについても観光客相手ではない宿ほど定価であることが多いようだ。なお、料金については以下のような表示を目にする可能性がある。
「星付き」以上では1泊朝食付きが基本だ。2食付き、3食付きの料金は行楽地のホテルをのぞくと形式的なものになっている。
どのタイプの宿でもシングルの部屋はほとんどない。シングルを希望すると、ダブルやツインの部屋を2~3割程度安い料金で提供してくれる。
チェックインは日本と比べ柔軟で、準備ができ次第すぐに部屋を使わせてもらえる。チェックアウトはおおむね正午。
日本と同様、室内では靴を脱ぐ習慣なので、宿の部屋でも靴を脱ぐ泊まり客が少なくない。トルコ人客が中心の宿では、浴室用のサンダルが置いてあったり(後述の「シャワーの仕切」と関連)、部屋履きのスリッパを用意している。
ほとんどの宿は浴室にしか設置していない(4つ星クラスでも)。寝室など生活空間からは極力ゴミを遠ざけたいと考えているらしい。買い物をしたときの「レジ袋」をとっておくと便利。
3つ星以上ならバスタブ付きも多いが、浴槽の栓がなくなっていることがしばしば。トルコに限らず西アジアからヨーロッパまでかなりの確率で遭遇するこの問題には、フィルムケースを利用した解決方法がある。まず、フィルムケースいっぱいに水を張り、重そうなコイン数枚を投入して密封する。極力空気が入らないようにするのがこつだ。このフィルムケースを靴下の中に入れると、かなり密閉性の高いバスタブの栓が完成する。栓の大きさに応じて靴下を二重、三重にして調整。デジタルカメラで旅行する場合も、フィルムケースを持参しよう。
中級までのホテルでは、シャワーにカーテンや仕切のない浴室が少なくない。比較的管理の良い宿でも浴室がこのタイプになっていることがあり、シャワーの後の浴室(トイレ)は床が水浸しだ。こうした宿の客室には、浴室用のサンダルが置かれていることもある。トルコ人は特に気にしておらず、当然の習慣として受け止めている様子だが、日本人にはやはり使いにくい。中級ホテルならタオルやバスタオルは確実に用意されているが、余分に持参しておくと便利だ。
エーゲ海や地中海の沿岸地域では普及率が高い。ホテルならばほかの給湯装置も併設しているので特に問題はないが、パンシヨンは要注意だ。このシステム以外には小さなガス給湯装置しかない宿が多く、天気が悪いと給湯が難しくなる。晴れていてもシャワーの利用が集中する時間帯は油断できない。また、日本にいるときの感覚で湯を使ってしまうと、タンクの湯を空にしてしまうこともある。シャンプーを水シャワーで流す悲劇に遭わないよう注意したい。
払うかどうかは個人の自由だが、中級ホテルなら必要性は少ない。そして経営がしっかりしている宿ほど、従業員はチップに依存していないようだ。本書が主に利用を想定している中級ホテルで、筆者がチップを支払う場面を考えてみる。
まずは、なにか特別に仕事を頼んだ場合。例えば、長距離バスの切符を代わりに買ってもらったり、アルコール類を置いていないホテルでビールを買ってきてもらうときがこれに該当する。頼んだ用事の内容にもよるが、金額は100円程度。サービスという考え方がはっきりしている国なので、客の要望には柔軟に応じてくれる。そうしたサービスには、それなりの支払いをする習慣が一般的だ。
中級ホテルでもチェックイン時に荷物を運んでくれる宿は多い。旅行かばん一つならまずチップは払っていないが、みやげ用に用意しているたばこ(日本製)を勧めることはある。荷物が多い場合には、50~100円程度のチップを渡している。いわゆる「枕銭」を中級ホテルで置いたことはない。ただ、経験はないが、通常以上に部屋を汚してしまった場合にはおそらくチップを置くと思う。
チェックイン前やチェックアウト後なら、大半の宿が無料で引き受けてくれる。当日だけでなく、数日間にわたる荷物預かりも引き受けてもらえることが多い。
いわゆるバイキング形式(アチュク・ビュフェaçık büfe)の場合と、個別に用意されている場合がほぼ半々。内容は通常トルコ風。
白チーズ、オリーブの漬け物、そしてトマトやキュウリといった生野菜を基本に、ゆで卵やハムも多くの宿で用意している。朝食に出されるフランスパンは焼きたてで、信じられないほど食が進む。ハチミツやジャム、マーマレードなどの種類も豊富だ。
慣れれば病みつきになる食材ばかりだが、朝食にはその土地の食習慣が色濃く反映されるようだ。日本風の朝食を嫌う外国人が少なくないのと同様に、トルコ風の朝食になじめない観光客は目立つ。